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  摂食障害

こんな人に多い病気です。

イラスト 精神科の医師によると、ここ20年ほどの間にもっとも増えた心の病気のひとつが、拒食症(神経性食思不振症あるいは神経性無食欲症)や過食症(神経性大食症)などの摂食障害だといわれます。
 食べることに必死だった時代には、人間も本来の食欲に忠実であったといえます。しかし、食べ物が豊富になり生活が豊かになったこと、そして成熟社会特有の逼塞感のようなものが、この病気の背景には潜んでいるようです。
 以前は、摂食障害といえば、圧倒的に10代後半から20代前半の女性に多く、若い女性の病気だといわれていました。しかし、今やその常識も崩れています。早い人は、10代前半から発症し、30代、40代になっても発症する人がいるのです。
 ただ、だれでもなりうる病気というわけではなく、ある種の素因を持った人がダイエットなどをきっかけに食欲のバランスを失っていくことが多いようです。最近ではこの素因、つまり健康を害するような生活習慣に溺れやすいという素因は、食事だけの問題ではないといわれています。アルコール依存症に陥る女性も2割ぐらいは、摂食障害の経験者です。若いころ、摂食障害になり、お酒の味を覚えると今度はアルコールに耽溺して依存症に陥っていくというパターンが少なくないのです。



なぜ、摂食障害になるのでしょう

 ダイエットが、この病気の直接の引き金になることが多いとされています。今や、小学生から中高年までダイエットをする時代です。やせていることが、ひとつの美の基準になっているといってもいいでしょう。実は、摂食障害の大きな原因もここにあるのです。
 テレビや雑誌を通じて、毎日のようにやせた女性の美が礼賛される時代です。やせることで、美しくなろうとする女性が増えるのも無理からぬことです。しかし、摂食障害になるような人は、その求め方が少し違うといわれています。
 つまり、もともと自分に対する評価が低い人が多いというのです。親に過保護に育てられたり、過度に干渉されて育った場合、あるいは逆に拒絶的な環境で育てられた場合、子どもは安心してありのままの自分を肯定できなくなります。このままの自分ではいけないのではないか、何とかしなければといった強い不安感があります。その結果、社会の価値観 、つまりやせていば美しい、価値がある、と いう基準に自分をあてはめることで、自分の価値、社会の評価を得ようとするというのです。
 中年以降の場合も、自分に対する不全感やときには自分の中に積もった澱のようなものを食事を拒否することで浄化しようとする人もいるといいます。
 結局は、現代社会の風潮にとらわれすぎることが、過度のダイエットや大食に走る引き金になると考えられています。



こんな症状が現れます

 このように摂食障害に陥る人は、やせることで自分の価値を見いだしたいという思いがあるため、やせようという思いも強烈です。その結果 、食事をするという行為にコントロールが効かなくなってしまうのです。
 徹底的に食事を制限し、どんどんやせていくのが拒食症です。周囲から見ればもう美しいとはいえない状態までやせ、月経が止まり、やがて脱毛が始まっても食事をとることができず、ついには空腹感すら感じることがなくなり、死に至ることさえあります。なぜ、そこまで食べ物を拒否するのか、健康な人から見れば不思議にも思えます。
 しかし、やせはじめると体が軽くなり、むしろ最初は仕事や勉強もはかどって元気になったように感じられます。そのうえ、ダイエットに成功しているという達成感もあります。その感覚によってますます頑固に食事制限をしてしまうのです。また、ボディーイメージのゆがみも指摘されています。やせるほど美しいといった感覚があるというのです。
 一度こうした落とし穴に入り込むと、口では太りたい、食べたいと言っても、太ることに対し強烈の恐怖感があり、なかなか食事がとれないと言います。
 しかし、実はこうした間も彼女たちの頭の中は食べ物でいっぱいになっています。何は何カロリーというエネルギー計算はもちろん、食べ物に対するこだわり、執着がどんどん膨らんでいるのです。そこで、ある時自己規制が破綻して、思いっきり食べる。そして自己嫌悪から吐き戻すという行為に走るようになります。これを習慣的に繰り返すようになるのが、過食症です。
 このように、過食症は拒食症からなることが多く、その逆はないといいます。ふつうの人でも、ダイエットに失敗して過食に走ることはよくあることです。しかし、病的な過食の場合、冷蔵庫の食べ物が空っぽになるほど食べる、炊飯器を抱え込んでご飯を全部平らげる、カード破産するほど食べ物を買い込む人もいます。そして、自分で大食のあと吐き戻すのです。この吐き戻すという行為も、慣れると次第に快感を感じるようになるのではないかといわれています。
 しかし、大食と嘔吐の繰り返しは、脳には満腹と空腹という信号がほとんど同時に送られるので、混乱を招く原因になります。また、肉体的にも電解質が失われ、体の体液バランスを大きく崩すことになるのです。
 どんどんやせていく拒食症に対し、過食の場合は大量に食べてもあとで吐き戻してしまうので、見た目にはそう太ってもやせてもいないことが多いのです。そのため、外見からはそれとはわかりにくいのですが、指に吐きダコがあるのが、ひとつの目安になります。
 このように、拒食症も過食症も、結局はやせることで自己の価値を高めたいという思いから発したダイエットによって、食欲のコントロールが効かなくなっていくことが大きな原因なのです。



こんな治療法があります

 治療は、ある程度時間がかかることを覚悟 しなければなりません。
 拒食症でガリガリにやせている人の場合は、とにかく体重を増やすことが先決です。それから、心の治療に入っていきます。過食症の場合は、最近SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬で、大食に対する欲求がある程度抑えられるといわれています。また、うつ状態が深刻ならばほかの抗うつ薬など、症状に合わせた薬が使われます。
 そして、治療の基本になるのが心の治療です。実際には多くの人が、食事の問題だけではなく、人間関係のトラブルや失恋などの問題を抱えています。そうしたことが食行動の乱れを引き起こすきっかけになっていることも少なく有りません。したがって、自分に対する評価やトラブルなどについても主治医やカウンセラーと話し合います。
 こうした心の治療と体の治療によって、時間はかかっても6〜7割の人は良くなっていくといいます。摂食障害で苦しんでいるのは、やはり本人です。周囲がおかしな行動に気付いたら、叱るよりも話を聞くことに努力し、そして早く専門家の支援を受けることが大切です。やはり、治療は早く受けたほうが治りもいいとされています。



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